これから必要な医療人

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後期研修への登録が10月と迫り、初期研修二年目の我々は選択に迫られている。初期研修とは異なり、より人生の指針を決める選択である。これからの医療情勢、キャリアとライフスタイルとの兼ね合いなどを加味すると難しい選択に思える。

未曾有の少子高齢化

未来のことは分からない。革命的な発明、未曾有の災害、パラダイムシフトなどを予測するのは難しく、往々にして当たらない。一方で、確実に予測できる未来は人口動態である。誰でも知っている常識として日本は「未曾有の少子高齢化」を迎えている。

 

このブログでは何度か取り上げているが、僕は「未曾有の少子高齢化」は相当に深刻な問題と考えている。全人口の65歳以上の割合である高齢化率は、現在25%を超えているが、2025年には30%、2055年には40%になる。そして高齢者はさらに高齢化し、出生数が減少、勤労世代が激減する。

 

こういった自体を「未曾有」と表現されるのは文字通り人類が今まで経験したことのない事象であるからだ。もちろん政府や専門家は対策を考えているだろうが、モデルケースが無いこの状況から的確な正解を導くことは難しく、正解があるかも不明である。

 

そして、この人口動態をコントロールすることは我々には出来ない。あれこれ考えていても意味がない。しかし、人口動態と医療は密接に関係し、財布の入り口を医療保険制度に支えられている我々にとっては切っても切り離せない問題である。

 

この状況下で僕は科の選択や病院の選択など、多くの人が頭を悩ます問題は短期的なストレスに寄与するが、大局的には意味がないと考えている。少しの歪が徐々に大きくなり、現行の医療制度は瓦解する。このリスクが常にある職業であることに間違いない。

「AI」の台頭

これは確定した未来ではないが、僕はそう遠くない未来だと考えているのは「AI」が医療のコンセンサスとなることである。人間なんかより「AI」を信じる。僕は医療人である立場であるからこそ、医師のいい加減さを知っているので自分の身に何らかの問題が見つかった場合の判断は「AI」に判断を仰ぎたい。

 

「AI」が得意とする画像診断では既に人間の域を超えている場面も報告されている。大学研究レベルでもディープラーニングを用いて、マンモグラフィの読影の正診率を上げている。こういった研究は大学レベルを超え、Googleなどの企業も乗り出している。

www.sankei.com

 

僕の地域では乳腺に特化した人は少なく、多くの場合は外科や産婦人科が片手間に診ている状況がある。マンモの認定試験をクリアした人した検診での読影は許されないが、この状況下で「AI」による読影より信頼する人は多くはないだろう。

 

画像診断だけでなく、「検査診断」や「予後予測」、「治療法の選択」に際しても研究が進んでいる。病理医や放射線診断医は職を失うと呑気に言っている内科医の喉元に「AI」のナイフが刺さりかけているのは確かだ。「収穫加速の法則」から指数関数的に伸びてくる分野である。

 

これから必要な医療人

近い将来、大量の知識を頭に詰め込む事は時代遅れになるかもしれない。感覚としては洗濯板で洗っていた時代から洗濯機への進化くらい劇的なものになるかもしれない。

 

この予測のもと、僕が考える「これから必要な医療人」は大まかに3つに分けられる。

①新しい技術を作る人

②新しい技術のを活用してトータルコーディネート出来る人

③新しい技術の外にいる人

 

①は言わずもがなで、研究者である。医療構造そのものに大きな影響を与える人である。一発当てれば大きく、また夢に向かって努力する過程は面白いだろう。一方で、分野としてはレッドオーシャンであり、全世界と戦う必要がある。また意味合いは違うが、教育も付随する。未来の医療人を育てる人材も必要とされる。

 

②は僕が1番必要だと思っている人だ。客観的なデータを「AI」が導き出してくれた。それを患者の個性に合わせてトータルコーディネートする。様々な生活習慣病を持っている患者に対して、問題ごとの危険性や効果を親身に説明すること。また、重大な問題に対してコミュニケーションから解決策を考えることなど、人間味が重要となる。

 

また、大局的判断も必要となるだろう。機械が下した冷たい判断が、はたして患者が望んでいるのか。その患者が最もプライオリティと思う部分に対してケアをするのも重要だろう。これにおいてもコミュニケーション力が重要となる。

  

 このように医師は機械と生身の人間との”通訳者”になるのが、僕なりの見解である。医学知識の持ち合わせない人に対して、機械の下した判断を伝え、患者にとって最良の選択が出来るようにトータルコーディネートすることである。それに際してはマネジメント能力やコミュニケーションスキルなど持つべき素養が変化するだろう。

 

③に関しては説明するまでもないが、機械が出来ない技術に当たる。想像しやすいのは外科や救急医療だろう。それこそターミネーターみたいなロボットが生まれれば淘汰されるが、現状では代替する技術は台頭していない。最も、少子高齢化でやりがいのある症例が減ってくるのは確かであり、輝かしい外科治療や救急医療は減ってくる。

まとめ

これからの医療は「未曾有の少子高齢化」と「AI」が中心になってくると思う。前者は確定した未来であり、後者は不確定な未来だが一考する必要はあるだろう。

 

前述したように広義では病院や科の選択は意味がない。どの病院や科を選択したとしてもリスクはあるし、考え方しだいでは生き残り戦略は変わる。

 

一方で、生き残りをかけた賽は投げられれている。固執して「AI」が台頭している知識勝負に対して真っ向から対決を挑むのは無謀だろう。奪われる分野に固執するのは危険だ。より時代の背景に合わせて柔軟に対応出来る人が好まれるだろう。

 

総合診療医や地域医療は馬鹿にされがちだが、日本の社会事情に合った需要から考えると最も必要とされる場所かもしれない。専門性の高い特別なスキルはないが、トータルで患者を支える医療が必要だ。専門性の高さを誇って馬鹿にしている人たちが、下って嫌々マネジメントやコミュニケーションスキルを磨く日はそう遠くない。